
「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」(佐宗邦威:著)(以下、当書と記載)を読み、学んだことをシェアしようと思い、この記事を書きました。
当書は、リーダーになる為のヒント「デザイン思考」が学べるように書かれています。中でも「ゼロからイチを創る」ノウハウはとても参考になるので、いくつか抜粋して解説していきます。
目次
従来の思考法とデザイン思考はどう違うのか?
そもそも従来の思考法とデザイン思考には、問題解決のためのアプローチやプロセスに違いがあります。
従来の「思考」とは、「知識」や「情報」を知識に変換するプロセスの事を指します。最近では白黒つける価値がある重要な問題を見極める思考法(イシュー思考)を題材とした書籍『イシューからはじめよ』がベストセラーとなったことで、思考法に興味を待たれた方も多いのではないでしょうか?
一方、「デザイン思考」とは、「曖昧」な「心の変化」に「形」を与えるプロセスのことを指します。
従来の思考が論旨を明確にする思考法だとするならば、デザイン思考は相手(顧客)のココロに寄り添う思考法だといえます。
世界的な潮流を背景に、デザイン思考が注目を集めている
なぜ今の時代に「デザイン思考」が注目されているのか?
その理由としてホワイトカラー人材にとって、創造的問題解決力が必須となっているからだと挙げられていました。ホワイトカラーとは、知的生産を仕事としている人たちです。
世界的な潮流1:先進国のビジネスではイノベーションが求められる
日本をはじめとした先進国では、言うまでもなく社会が成熟しています。そうなると、その経済圏で経済活動する企業が生き残るためには、非連続的にイノベーションを生み出し続ける必要があります。それは、大企業だろうが中小企業だろうがベンチャー企業だろうが、一緒だと考えます。
「目の前で本業が消えていく」「新規事業を作らないと生き残れない」そんな会話が会社の中で飛び交う機会も増えていると感じます。
今後は、望む、望まないに関わらず、また日本国内のみならず、世界との競争にもさらされます。新興国の安く優秀な労働力との競争です。それらの労働者と同じ土俵で戦っていては、給料は下がる一方です。
その対抗策として、自分たちだけでしかできない強みを見出し、生き残っていくしかないという流れは、すでに必然といえるでしょう。そのためには、新たな価値を生み出す能力を高めなくてはいけません。
昔の日本は、研究開発部門による技術主導のイノベーションが行われてきました。一方で今後は、技術のみでなく文化やブランドなども資源ととらえ、そこからオリジナル価値を生み出すことが重要だと当書では書かれていて、共感しました。
世界的な潮流2:一億総クリエイターとなれるインフラ環境
インターネットとスマートフォン、SNSの出現により、社会構造は完全に変わりました。
ブログ台頭の時代からその兆しはありましたが、今は創作活動や表現活動はスマートフォンとパソコンさえあれば誰でもできる時代です。Facebook、Instagram、YouTubeのユーザー数は日本でも数千万人規模、世界的には数億人規模。そのことが、創作活動や表現活動を後押ししています。
これからは3Dプリンターの進化によって、創作物を自分の手元で作り出せる時代もすぐそこに迫っています。一個人が日々の生活の中でプチクリエイターになれますし、それを通して副業や本業ビジネスとして生計を立てることも一般的になっていくことでしょう。
世界的な潮流3:機会と人間の仕事の奪い合い
ディープラーニングなどの機械学習や人工知能は、2035年までにはさらなる発展を遂げるとのことです。インターネット上でまことしやかに噂されるように、これまで人間が行ってきた仕事が機械に替わることが予想されます。
一方で、オックスフォード大学により発表された機械に置き換えられにくい仕事は、以下の2つです。
ヘルスケアやラーニング、心理学など。人との「深い」コミュニケーションに関わる仕事
デザインやエンジニアリング、経営など。「想像」の中心にいる仕事
分析のような仕事は、人工知能が進化して様々なパターンを理解し、それを基により効率的な答えを出すことができるようになるため、置き換わる可能性が高い仕事に分類されます。コンピュータが分析した内容をもとに全く新たな解決策を創りだす、意思決定することは、人間の能力に頼られることになるでしょう。
世界的な潮流4:自分らしい幸せを求める時代へ
先進国を中心に社会が成熟すると、人々は物質的な満足よりも、精神的な満足に幸せを感じるようになると言います。
2050年には世界人口が90億人を突破すると予想されています。
限られた資源を今までの倍の人に行き渡らせるには、「自分らしい幸せに満足し、足るを知る」時代になっていくと当書では予想されていました。個人的には納得できる予想です。
その中で、想像力を発揮する仕事に日々邁進できることは幸福感が増すことだと当書で書かれています。
自分の生活スタイル自体をデザインし、自分の好みや天性に合った生活を送ることで幸福感を感じること。そのためのスキルとしても「創造力を発揮できる力=デザイン力」が重要になっていく、と説いていました。
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新しいことを考えだす「6つの感性」
マーケターにこれから求められるスキルは、既存のビジネスを回すだけではなく市場のルールを変えてしまうようなイノベーションを起こせることだと当書では述べています。
そのためには、新しいことを考えだす感性が必要だと。
それら感性には6つありますので、ここに挙げます。
- 機能だけではなく「デザイン」
- 議論よりは「物語(ストーリー)」
- 個別よりも「全体の調和」
- 論理だけではなく「共感」
- まじめだけでなく「遊び心」
- モノよりも「意義」
また、6つの感性とは別にデザイン思考には「5つのプロセス」というものがあり、これは
- 共感
- 課題定義
- 創造(アイデア力)
- プロトタイプ(試作品の作成)
- テスト(検証)
の5段階から成っています。それぞれ順番に進むこともあれば、戻ったりもします。
テストが終わって終了ということではなく、何度も前の段階に戻り、繰り返すことこそ【design(デザイン)】なのだという考えです。
感性の磨き方
感性と一言で言っても、「感性的思考」や「ポテンシャル思考」など似た言葉がたくさんあります。
一般的には、美や善などに関する印象を知覚する無意識下の感覚=感性だと言われていて、カント哲学という分野では、外界から触発されるものを受け止め、認識の材料を与える能力、すなわち「直感」であるとされています。
つまりは潜在的感覚の事を指すのですが、潜在的なスキルなんてどうやって磨くの?と疑問に思う方も多いと思うので、感性を磨くうえで、オススメな書籍やWEBサイトをいくつかご紹介します。
感性を学べる本・WEBサイト
【書籍】
経営における「サイエンス」重視に対する警鐘、「アート」的考え方の重要性を論じている本です。
「サイエンス」を重視し過ぎると、考え方の差別化が消失し、似たようなビジネやサービスが大量に生まれてレッドオーシャンにたどり着いてしまう。
これからは明文化されたルールや法律だけをよりどころにするのではなく、「真・善・美」を自らが判断するための「美意識」が重要になってくるよ、といった内容の本です。
「相手のニーズに応えるだけではなく、自らも判断し、選択していくことが重要」
感性を磨く上で重要なファクターを教えてくれる素敵な本です。
現代アートの価格の決まり方や、アート投資についての考え方などが書かれている本。
よくある投資本の一種なのかと言うとそうでもなく、プロのアーティストに大切なのは、自分の作品から出されるイメージやメッセージをどれだけ多くの顧客の心に感じてもらえるかに尽きる。などといった、クリエイターにとって重要な考え方が書かれています。
ちなみに、長続きするアーティストの特徴は「環境に合わせて自らを柔軟に変えることができる人で、現実に直面し考えて、自らの殻を破れる人物」とのこと。
韓国でベストセラーとなった本ですが、日本でも2020年に本屋大賞翻訳小説部門受賞で話題になったので、読んだ事がある人も多いはず。
怒りや悲しみといった感情を感じることがない少年のお話なのですが、感情が豊かではないからこそ、自分の色眼鏡で世界を捉えず、相手から発された言葉や出来事を「事象」として捉え、発言の「真意」を問い、「理解」しようと寄り添おうとする描写が「相手(顧客)のココロに寄り添う」デザイン思考と通ずる部分だと感じます。
事実、この本はカウンセラーやセラピストなど、相手に寄り添うことが重要な職業の方々に広く勧められていますので、読んだことのない方は是非読んでみてください。
【WEBサイト】
筑波大学の大学院教授が運営しているサイト。
文字がたくさんのお堅い印象のあるサイトですが、この先生が書くブログはどれもが示唆に富んでおり、とても勉強になります。感性やデザイン思考を科学という分野を交えながら分かりやすく教えてくれているサイトです。
デザイナーの常識とビジネスマンの常識
また、当書では各チャプターの最後に、既存ビジネスマンの常識と、イノベーションを起こすために重要なデザイナーの常識を対比させていました。非常に興味深かったので、ここに挙げます。
個人的には非常に参考になりました。ご参考頂けると幸いです。
▼デザイナーの常識 | ▼ビジネスマンの常識 |
・調査ではインスピレーションの湧きやすいビジュアルを探す | ・調査では事実のみを集めるべし |
・思考は類推(アナロジー)を使ってジャンプさせる | ・思考はロジックツリーを使って論理的に |
・プレゼンは、印象的なストーリーで共感を得る | ・プレゼンは、正しさで説得する |
・サマリーは1枚の絵で表現する | ・エグゼクティブサマリーは3つの要点を書き表す |
・作りながら考える | ・何を作るか考えてから作る |
・形にして議論する | ・前提条件をしっかり定義し、論理的正しさから結論を合意する |
・プロセスは緩く設定し、柔軟に変える | ・プロセスは全員が明確に分かるよう構造化 |
・良い点を見つけて強める | ・悪い点を潰していく |
・まだ世の中に存在しないものを考えるのが好き | ・いまある物事の効率性をいかに上げるか |
・一度作ってみてそれをどんどん改変していく | ・失敗のないように積み上げ型で考えていく |
・あらゆるものごとから刺激を得て、発想する | ・リサーチから分析し、結論を導き出す |
・発想にもユーザーを巻き込んでいく | ・アイディアは自分たちで作ったものを検証すべし |
・話を聞いた人数にはこだわらない | ・必要なサンプルサイズをちゃんと準備 |
・学びやアイディアが見える化できる環境 | ・会議室は、意思決定のために大人数が入る場が良い |
・ホワイトボードなどの書き込みが自由にできる環境 | ・会議室は必要に応じて取れば良い |
・体を動かしやすい環境 | ・机や椅子を配置する |
・刺激物をたくさん置く環境 | ・必要ではない資料は用意しない |
・ラフなアイディアやプロトタイプを気軽に見せ合う | ・アウトプットの議事録を大事にする |
・メモは手書きでポストイットやノートに図で描く | ・メモはパソコンで |
・自分らしいキャリア=個性を自分で作る | ・自分が上り詰めるキャリアパスを決め、競争に勝ち残る |
・プロセスはラフに決めつつも、アウトプットに合わせて柔軟に組み替える | ・全体のプロセスをまず決めて、着実に進める |
・一見役にたたなそうなことも勉強してみる | ・自分の職能を決め、キャリアパスを描き、必要な勉強をする |
・時には全然違う分野の人とも協業してみる | ・時間効率を考え、役割を決めて分業する |
「デザイン思考」を身につけよう
クリエイターとは、自らの責任を持って世の中にアウトプットをし続けていく仕事です。
デザイン思考を身につけることができれば、誰もが思いつかなかったようなアイディアを世の中に生み出せる可能性がでてきます。
イノベーションを起こす人材になるためにも、デザイン思考を身につける事を意識してみてはいかがでしょうか。
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