素朴な疑問!!これから地方中小零細企業はどう戦うと良いの?

素朴な疑問!!これから地方中小零細企業はどう戦うと良いの?

今回の会員向け記事は、tree編集部が株式会社ぺライチ創業者の山下翔一氏にお話をお聞きしました。年間相当な数の講義を地方で行っていて地方と関東でお仕事をしている山下氏だからわかることを中心にお聞きしたいと思ってインタビューさせていただきました。

ここ数年セミナー講師として地方を訪れ、様々な人と触れ合う中で何か感じることはありますか?

これだけインターネットが普及しているにも関わらず、私たちが思っている以上に地方の人は圧倒的にITリテラシーが低いし教育も遅れています。東京はマーケティング戦略をきちんとすれば効果を発揮するけど、地方はきちんとマーケティング戦略をたてて実行しても東京で実行した場合と比べ、全然効果がでづらいんですよ。

同じ様に戦略を立てているはずなのに、なぜこのような違いがでるかわかります?

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やはり、ITリテラシーが高い人が少ないからですかね。あ、マーケティング戦略を試す人口が少ないとか?

違うんですよ~。東京はシンプルに言うと価値経済で動いている。だけど、ほとんどの地方は、基本的に「信用経済」で動いているんです。

例えば、仕事を発注するにしても、商品やサービス自体の価値よりも「◯◯さんにお願いしたい」ということが多いのですよね。東京でももちろん知人にお願いすることはありますが、価値を見極めた上で発注しますよね。地方の方が「商品やサービスの価値自体」よりも「信用を優先する」傾向にあり、東京と同じように価値訴求をしてもなかなか成約に結びつかないんです。

日本全体の景気がいいとき(昔)はこの信用経済をもとに地方は活性化されていて問題がなかったのだけれど、バブルがはじけて以降、景気が悪い状況がつづいた今、多くの企業に余裕がなくなってきて信用よりも価値を優先するようになってきているんですよ。「安くて価値の高い商品の方がいいよね」という風にね。つまりこれは「信用経済をベースとした地方の経済が東京をはじめとした価値経済へと局所的に置き換わってきている」という現象がおきているということが言えるのです。

へぇ~、そうなんですね!!我々の運営会社であるBigmacは福井本社です。価値経済という言葉と信用経済という言葉の意味合いは凄く理解できますね。

ですよね。現状、マーケティングツールを始めとした様々な便利なITツールのほとんどが東京の企業がリリースしていますよね(本当は地方からこのようなサービスがもっとでてきてほしいのですが)。なので、そういった企業が地方の仕事の一部をリプレイスして(置き換えて)いっているのですね。

田舎にいけばいくほど信用経済の色が強いです。地方企業は「価値」を生まずにその「信用」に甘えて売上をあげていくと、気づいたら価値経済の強者(企業)たちが根こそぎ売上をかっさらっていってしまいます。そのことにいち早く気づき、意識を変え、経営者をはじめとした地方人材のレベルアップをはかることです。つまり、ITやマーケティング、そしてそもそもの経営に関するリテラシーを上げることで、日本の都会の企業や海外の企業と太刀打ちできる武器をもつべきです。

さらに、ITの利活用に関していうと、地方企業こそ活用できなければ未来はありません。地方企業の経営課題において、目の前の売上を上げることももちろん必要ですが、同時に東京の企業以上にシビアなのが「人材不足」です。地方の企業において、人材の不足はこれから先もどんどん深刻さを増していきます。つまり同じことを同じ人数・工数でやっていても会社は潰れていく、ということです。たとえその会社が黒字だとしてもです。そのため、地方企業においてとても重要なことの一つが「ITの利活用による業務の効率化」があるのです。これを早急に進めない限り、地方の企業はどんどん潰れていくでしょう。地方企業の経営者やスタッフのITリテラシーは急務です。

ちなみに、地方がなぜマーケティングに遅れているのか、田舎の出身者である私の感覚を説明しますね。

地方って「物々交換の文化」っていうじゃないですか?でもそれは厳密にいうと私は違うと思っているんです。あれは結果だけみると物と物の交換なんだけど、厳密には「GIVEとGIVE」なんです。「コレは◯◯さんにとってこれくらい価値があるよなぁ」なんてほとんど思ってないんです。「あげたいからあげてる」んです(笑)これが双方向に行われるのでGIVEとGIVE。地方とは「価値」というものの意識は薄いなかで物やサービスが流通する文化なのです。

地方とは、価値以上に「信用」を大切にする文化です。東京ももちろん信用は大切にしますが、価値があればまずはトライしてみようという人が多いのです。一方で地方は商品・サービスの価値よりも「誰の商品・サービスか」「誰から勧められたか」それが大きいのです。その購入や発注における「何を重要視するか」というプライオリティ(優先順位)が地方と都会(特に東京)では違うなぁと感じます。

私は田舎の出身のため上記のことを体感として知っているので、ペライチにおいても「たとえサービスが良くてもそれだけでは地方では使われない」ということを理解しています。だからこそ地方に直接お伺いして、まずはその地域で愛されるものを体験・体感した上でその地域を好きになり、語れるようになり、そうなることで地域の方も信頼してくださるのです。その上で、自分の声で自分の想いを直接聴いてもらうことをやっていきました。特にはじめて伺う地域に関しては、できるだけ事前にいろいろネットで調べたり、その地域出身の方に聴いて、よそ者としてその文化に触れることで地元の方々よりも語れるところをつくっているんですよ(笑)

このように、地方は、ITやマーケティングなどの教育がまだまだなんです。これからは信用だけを軸にした企業活動では、いまの資本主義経済のなかでは、戦っていけない人や企業はどんどん増えていくでしょうね。

今でも、東京の企業がどんどん地方に進出を試み、一部の企業は地方でも拡大していっています。私が創業したペライチも、積極的に地方へのプロモーションはやっていないですが、地方において自発的に広まっていくための「ペライチサポーター制度」というものをやっていたりします。

インターネットで全てがつながる時代になりましたが、それでも一つ一つ現地に訪問して現地の方々と対話する最も大きな「意義」は何でしょうか?

いろいろあるよ。大前提として私は地方が好きです(笑)
そもそものポリシーとしてペライチは「IT業界から置き去りにされてきた方を救いたい」としてやっています。高齢者や女性などITリテラシーが低い方々、お金がない方々、そして特に地方の方々です。地方の方が前述の通り、IT利活用が必要にもかかわらずITに関する情報が少ないしリテラシーが低いからです。地方では自分たちのビジネスにITサービスを活用できている人や企業は、体感で数パーセントしかいないと感じます。ネットをつかえるインフラは整ったのだけれど、活用は全くできていないです。

ビジネスの観点から言えば、ペライチが救いたい人や企業って「スーパーコスパ悪い!!!」ですよ(笑)そりゃあ、お金もってる大手企業さんたち向けのサービスを提供して、高値で売るほうが圧倒的に効率的ですよ!今までのIT企業の多くがそれをやってきたんですから。

それでも、誰かがやらないといけないんですよ。地方を救うため、日本を盛り上げていくためには。だからペライチは極力シンプルに60代以上の方でもカンタンに使えるようにしたし、無料から使えるようにしたし、たとえ謝礼も交通費もでなくても地方の山奥とかでもセミナーにいくんですよ(自分で言ってて笑えてきた)!笑

私たちが創業時に掲げた想いを忘れたくないんですよ。お金もってるもってないとか、そういう偏見ではなく、価値を生んでいる人や企業に伴走したい!想いをもってチャレンジしている人や企業に伴走したい!そういう人や企業に優しい会社で在りたいんです。

まとめると、地方においては、商品やサービスの価値だけでは受け入れていただけない。だから、直接会って話をして想いを伝えることで、信用経済における重要な「信用」を積み重ね、信頼してもらえる存在になる、ということですね。

相変わらず熱い!!沸騰している人ですね(笑)
山下さんみたいな熱い想いで地方に行っている人は本当に少ないでしょうね。あと、直接、サービスへの想いや理念を伝えることって大切なんですね。

サービスがいいだけだと自分のためだけにしか使わないんですよ。むしろ多くの人に教えたくないってなることが多い(笑)でもそこから、我々の理念やビジョンを理解してもらえると、それが「広めなきゃ!!」っていう使命に変わってくださるんです。

マーケティング的に言うと、その内向きのベクトルから外向きのベクトルに変わる瞬間にキャズムがあるんです。

事業成長性を考えたとしても、一般的なユーザーよりもその地域を愛するファンを増やすことで、目の前の人に寄り添いながらペライチの良さを我々の想いとともにどんどん伝え広めてくださるのが最高の形だなぁと思っています。

たくさんあると思いますが、マーケティング活動において東京の方と地方の方でハンデを感じる部分はありますか?

いろいろありますけど、広告文やコピーを一つとっても地方と東京では刺さるものが全然違うかな。

例えば、Youtubeさんが以前発信されていた「好きなことで、生きてく」というコピーも、たぶん東京をはじめとした都会と田舎でだいぶ捉え方や刺さり方が違うと思います。

それは都会と田舎で人の生い立ちが全然違うからなんですよ。都会の方の暮らしって、地域との付き合いが希薄化していて、孤立化しているんですね、だから、多くの方が生まれたときから一人の「個」として生まれてくる。一方で、地方というのは、生まれたときから「◯◯さんのお子さん」なんです。つまりそれは、生まれたときから集団(地域)の一部として生まれてくるんです。そうなると、コミュニケーションの主体も違ってきて、東京の人は「I=私・自分」を強く意識するんだけど、地方は無意識に「WE=私たち」を意識しているんです。

だから、都会の人は「自分らしく」とか「自分が幸せになる」というコピーも刺さるし、都会のコミュニティは「好きなこと」や「興味関心」でつながることが多く、成功する人を称賛する傾向が高い。一方で地方というのは「自分だけが幸せになる」という意識はNGで「叩かれる」んです。しかも、都会と違って「コミュニティ≒地域」だし持ち家が多いので気軽に引っ越せない分、ハブられると生きづらい環境なんです。だから常に周りの目を気にして生きている。だから「自分の好き勝手に生きる」という価値観は羨ましくもできないことが多いが故に叩かれる対象になりやすいのです。つまり「ひがみ」や「嫉妬」ですね。地方では、そのひがみや嫉妬をマネジメントしないといけない。「一緒に幸せになりましょうよ!」という配慮が必要なんです(笑)これはあくまで一例ですが、都会と地方の田舎ではコピーだけでも受け取り方や感じ方が違うんです。それがコンバージョンレートに跳ね返ってくるんです。

間違いないですね…。うちも地方で知らない内に目立って色んなバッシングにあいました。置き去りにするからそうなるんですね。地元のことも考えているんならそれを発言し行動しないと認めてもらえないんですね、勉強になります(笑)

私なら上手くやってあげたのに(笑)
目立つ前に「なぜやるか」「自分の成長の先に地域にどう還元しようと思っているか」そして「一緒に成長していきたいと思っているんです!」という文脈とプレゼンテーション能力と何より熱意がほしいね(笑)

そういう地方と東京の行動経済学の違いや適したマーケティング戦略の違いみたいなものを理解しておくと、地方から東京へ、またその逆の進出もしやすいと思いますね。「福井を盛り上げたくて東京に進出してきます!私が先陣を切って危ない東京を開拓してくるんでゆくゆくは一緒に東京に行きましょう!」みたいな文脈が大事ですね(笑)

我々treeを運営しているBigmac inc.も福井県(地方)から東京に進出した企業になります。
以前は東京から地方に展開するという流れが多かったという認識ですが、地方を知っている山下さんから見て今後、地方から東京に進出する企業は増えそうですか?(笑)

正直、どっちにも転ぶ可能性があると思う。企業というものがもっと細分化していくので、事業主や個人が増えていくでしょう。一方で、地方=田舎(福岡や札幌などの地方都市ではなく)とすると、地方は都市部への人口流出や少子化による人口減少が進んでいる。そこに「地方創生」という旗の元にメスを入れ、都市部から田舎への人口の揺り戻しを行う動きは国全体としてあるので、一部の企業は都市部、特に東京への進出をしながらも、その揺り戻しもあるため純増数でいうとさほど大きくは増えないかもしれませんね。

個人的な希望としては、日本が「世界をリードする日本」となるために、世界のなかで課題先進国である日本にしかない「日本の地方の課題」にいち早く着目し、それを解決する粋な企業が地方から生まれ、世界的な企業がどんどん地方から生まれていくことを望んでいます。東京がイケてて地方(田舎)がダサいという空気を一新したいんです!!日本の田舎にこそ世界最先端の課題があり、だからこそ世界の優秀な人材が集まり、世界最先端のビジネスが生まれ、地方が潤っていく。そして優秀な人材が育ち輩出され、同時に自然にも恵まれ真に豊かな暮らしができる最先端の場所なんだ!!そういう常識に変えていきたいんです!!!

とは言っても、東京にはまだまだ日本一のビジネスチャンスとマーケットがありますし、地方企業の進出もしやすくなっています。チャンスは大いにあると思いますね。東京で上手くいきやすい経営者や活躍できる人材は、地方との経済力学の違いを理解し、受け入れ、どんどん改善してアジャストしていける人たちだと思いますね。

距離や壁を勝手につくっちゃうんですよね。文化を受け入れるって本当に重要なことですね。

地方と東京では従業員のモチベーションも違うし、価値観もだいぶ違う。でも一緒なこともありますよ。それは「一人ひとりと向き合うことが大事」ということです。経営においてもマーケティングにおいてもそうですね。

地方だろうが東京だろうが、一人ひとりの従業員に向き合う、一人ひとりのお客さんに向き合うこと、これはとても大事なことだと思います。それぞれ特性や違いはあるけれど「その違いをまずは受け入れて」そして「相手を理解しようと努力すること」こそがとても大事だって私は思いますし、私はそれを体現してきました。それがないと相手も自分のことを理解してもらえないし、自分と合う人としか商売ができないですよね。

東京には東京の良さがあり、地方には地方の良さがあると思うのですが、これから地方の企業はどう戦っていくべきだと考えますか?

スキルで言えば、ITやマーケティングや経営についてのスキルは上げなきゃですよね。まだ猛者どもと戦えるだけの武器が整っていませんからね(笑)あとは、地方から東京、東京から地方に進出するのであれば、コネクションも重要だよね。自分の知らないことを、その地域の中の方から学ぶこともとても大事。

他方で、地方企業は、東京だけじゃなくて初めから海外とか世界を視野に入れたり、海外の人の視点を取り入れたりすることも重要だと思います。そうすることで、地元で当たり前のことが当たり前じゃなかったり、意外なものが外の人にとっては魅力に感じたり、その地域課題を解決するソリューションが他国の課題を解決するヒントなったり。そしてそれらがビジネスとしていきなり世界的なマーケットに広がる可能性だってあるのです。そういう計り知れない可能性があるからこそ、私も地方に足しげく通っているのです!

ちなみに、日本は海外の一部の人たちから「ゾンビ社会」と言われているんですよ。少子高齢化を揶揄することばですね。
でも裏を返すと、それは「世界中が日本の課題とそれを日本がどう解決するかに注目している」ということなんです。日本にはそういう世界で最先端の課題がたくさんあります。地方の過疎化、少子高齢化、独居老人の増加、孤独死の増加、医療と介護の問題、そういった社会課題に日本はどう対応していくのか?それが次世代の最先端のビジネスにもなっていくのです。

その舞台は「東京」ではなく地方、それも「田舎」なんです!地方の方はそれを他人事としてとらえるんじゃなく自分事として捉えてほしい!今は「自分の住む数万人の街の課題」くらいにしか思えないだろうとけど、それがやがて世界中に広がって数億人・数十億人の課題になるんです!その課題を「あなた」が解決できれば、あなたは世界のヒーローになれるんです!だから地方の特に田舎の皆さんには頑張ってほしいんです!地域課題を正しく認識する。そしてそれを他人事に思わず当事者意識をもつ。その先に「大きなビジネス」そして「ヒーローへの道」が広がってるのですから!

「ぺライチ」ですが、すごい勢いで利用ユーザーが増えていますね。今後の戦略を言える範囲で教えてください。

言える範囲でいいます(笑)
ツールとしては17万ユーザー(2019年5月末時点)とまだまだです。我々が掲げる「1億総ネット利活用時代」の実現にはユーザー数もまだまだだし、地方人材のITリテラシーの向上という点でももっともっと教育に力を注いでいかないといけない。その先に海外も見据えています。

そして、中小零細企業やいわゆるスモールビジネス、マイクロビジネスをされている皆さんの経営課題やビジネスにおける課題って、売上の向上以外にもたくさんあるんです。我々はそういう課題だったり悩みを、地域においてまず「最初に相談される存在」になりたいですね。「あなたの悩みに寄り添えるパートナー」だったり「あなたの挑戦に寄り添える伴走者」になりたいんです!そのために、もっと皆さんの経営やビジネスにおける悩みを見える化して、それを解決できる「あなたの街の信頼できる人」をつなげていきたい。私たちが誰よりも皆さんの挑戦に寄り添い、皆さんの期待に応えられる存在になりたい。それを「IT」と「人」という両方の力で実現したいですね!

最後に地方で頑張っている企業さん、個人さんにメッセージをお願いします。

「東京はいいよね」とか「私の地元なんて」と思わずに「あなたの地域にしかないもの」に目を向けてください!「あなたの地域にしかない課題」「あなたの地域にしかない魅力」が必ずあるはずです!それが大きな価値に変わり、大きなビジネスチャンスになるのです!「誰かがやるだろう」じゃなく「私がやる!!」という想いをもってほしい!あなたが「未来の世界のヒーロー」になれることを私は信じています!!

いいインタビューありがとうございました。私たちも地方発の企業として目標になれるようにどんどん走っていきます!

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