
ライブコマースは、インターネットの発達と情報デバイスの普及によって登場したマーケティング手法です。マーケティング担当の初心者や、今後担当になる可能性を持つ人に向け、ライブコマースの基礎知識や特徴、実例サービスをご紹介します。
目次
ライブコマースとは
ライブコマース(live commerce)とは、インターネット上で生放送の動画を配信して、動画内で商品やサービスを紹介・販売する手法を指します。知名度があるタレントや一般人のインフルエンサーといった、集客力・影響力・親近感を持った人がライブ動画に出演することで、視聴者に購買を促します。
テレビショッピングがイメージとして近いですが、ライブコマースとテレビショッピングの違いは、インタラクティブ性にあります。インタラクティブとは、「相互に作用する」という意味を持つ英語です。テレビショッピングが一方向に発信する手法であることに対し、ライブコマースでは視聴者はリアルタイムで出品者や販売者に対し質問やコメントができ、臨場感を持って購入の是非を決められます。
ライブコマースの流行
ライブコマースは、2016年の中国で、ECサイトでの活発化で注目されました。
ECとは、electronic commerce(エレクトロニックコマース)の略で、電子商取引を意味します。ECサイトは「自社商品(もしくは他社商品も含む)やサービスを販売する、独自運営のWebサイト」を指します。
<引用元:中国ニュースサイト:Weinan Net>
2016年、中国でのライブ配信サービスの利用者は3億2500万人に達し、インターネットユーザー総数の45.8%を占めたと言われています。また、2015年の10月から2016年の5月にかけて、ライブウェブキャストの数は52.71万人から85.85万人へと、38.6%の増加が見られたとあります。
中国を拠点とする企業、アリババグループのECサイト『淘宝(タオバオ)』では、1人で年間50億円を売り上げたインフルエンサーも登場し、ライブコマースが注目される要因のひとつとなりました。消費者人口が豊富な中国で流行したライブコマースは、諸外国にも注目され、広まっていきます。
日本でのライブコマースの動向
マーケティング・リサーチ会社『マクロミル』は、2018年7月に、ライブコマースの利用状況について調査データを公表しました。
<引用元:株式会社マクロミル 運用サイト【HoNote】>
上の図は、ライブコマースサービスの認知状況を、世代別にグラフ化したものです。
10代から40代を対象にしたところ、10代の認知度で40%、40代の認知度は21.5%となっています。統計全体からの認知度は29.7%で、若い世代ほどライブコマースを知っていることがわかります。
<引用元:株式会社マクロミル 運用サイト【HoNote】>
ライブコマースサービスの視聴と購入の経験を表す調査結果からは、視聴と購入の経験がある人が、男性は19.7%、女性は7.3%です。女性に比べて、男性のライブコマース利用者数が2倍以上であることがわかります。
<引用元:株式会社マクロミル 運用サイト【HoNote】>
ライブコマースサービスで、具体的に何を購入したのかも、統計が出ています。上位5品目の中で、『服』の購入率が他を引き離して1位となっています。
<引用元:株式会社マクロミル 運用サイト【HoNote】>
ライブコマースサービスの今後の利用意向に対するアンケートでは、84.8%の回答者が「今後もライブ配信を視聴し、買い物をすると思う」と返答しています。若年層から親しまれた動画配信サービスとして、今後もライブコマース市場は伸びていくことが予想されます。
ライブコマースの特徴とは
ライブコマースの特徴を、3つのポイントにまとめました。
- 配信者とのコミュニケーションで、視聴者の購買意欲を向上させる
ライブコマースサービスでは、ライブ配信中にコメント欄で、双方向からのやりとりが可能です。単に商品情報が紹介されるよりも、配信者を通してのコミュニケーションが視聴者の「買い物」という行動への満足感を高めます。
「モノ消費からコト消費へ」と言われるようになった昨今では、「気に入った商品(モノ)を買う」に加えて、「自分が好きな配信者とやりとり(コト)をして買う」という点に、需要があると言えます。
- 従来のECサイトにあった不安感の改善
従来のECサイトでは、記事や画像、一面からの一方的な動画しか無く、消費者は「本当に、期待どおりの商品なのだろうか?」と思い、商品到着までは現物を確認できません。ライブコマースサービスでは、ライブ動画で多角的に商品を紹介し、視聴者は提示される商品情報を納得できるまで吟味できます。
- さまざまなジャンルでのマーケティングに導入が可能
ライブ動画で商品を紹介する、というシンプルな仕組みなので、さまざまなジャンルのマーケティングに活用できます。
- 販売する商品やサービスはどのようなものか?
- ターゲット層の設定と、影響力を見込めるふさわしい配信者の決定
- ライブ動画の配信媒体
といった戦略を用いれば、ライブコマースは効果を発揮するでしょう。
ライブコマースの実例サービス5選
現在、日本で展開されているライブコマースサービスから、代表的な5つを紹介します。ライブコマースに関心を持つマーケティング担当者は、登録してみて閲覧したり、実際に購入したりすると、体感として理解しやすいでしょう。
確認するポイントとしては、以下のものが挙げられます。
- 取り扱っている商品やサービス
- 配信者であるタレントやインフルエンサー
- ライブ動画システムの操作性・使用感
- 配信動画のクオリティ
また、コメント欄を「視聴者の生の声」として見れば、有益な市場情報の傾向として役立つでしょう。
ライブコマースの実例1.メルカリチャンネル
メルカリチャンネルは、株式会社メルカリが運営するフリマアプリ『メルカリ』のライブコマースチャンネルです。「メルカリチャンネル」サービスは、2019年7月8日をもって終了しています。そのため、「メルカリチャンネル」というものがあったということを、参考として知っておくと良いでしょう。
母体のメルカリは、日本とアメリカ、イギリスでもサービスが提供され、アプリダウンロード数は1億を突破しています。メルカリチャンネルで取り扱っていた商材は、メルカリと同様で、食品や娯楽用品など多彩でした。配信者には、タレントの起用だけでなく、メルカリのヘビーユーザーやインフルエンサーも出演していました。また、一般人である主婦やOLが、着なくなった服や使わなくなった雑貨を販売するライブ動画も配信されていました。
ライブコマースの実例2.SHOPROOM
SHOPROOM(ショップルーム)は、DeNAの子会社である「SHOWROOM(ショールーム)」が提供するライブコマースサービスです。サービス開始第1回の際、女優の北川景子さんがドラマ内で着用していたファッションブランド「NEMISSA(ネミッサ)」を紹介したことでも話題になりました。
配信者のタレント2人が、「NEMISSA」の特徴や着こなし方を紹介し、ライブ画面下方のバナーをクリックして購入ができる旨まで案内をしました。リアルタイムでユーザーに購入を働きかけられるという、ライブコマースのメリットを生かした事例と言えます。
ライブコマースの実例3.Live Shop!
Live Shop!(ライブショップ)は、単に商品をアピールするだけでなく、配信者のモデルに「メイク術」や「ファッションコーディネート」を実演してもらうことで、訴求力を向上させているのが特徴です。
また、ライブ動画はスタジオで撮影されたものが主流で、クオリティを追求している点も好評を得ています。運営会社の『Candee』は、2015年の設立以降、ライブ配信や動画の企画・制作・配信までを一括で手掛けてきた企業です。タレントやインフルエンサーへのネットワークの充実さを活かしたサービス展開と言えるでしょう。
ライブコマースの実例4.MimiTV
MimiTV(ミミティービー)は、メイク・ヘアアレンジ・ネイルなどを、人気モデルの配信により紹介するライブコマースサービスです。ライブ動画の配信以外では、2018年11月に東急ハンズのTwitter公式アカウントと連携し、リップが抽選で当たるキャンペーンを展開する等、PRに注力しています。
10代から20代の女性をターゲットに、美容情報に特化した動画メディアとして展開しているので、ターゲット層を絞れる商材を扱う企業にとっては活用しやすいでしょう。
ライブコマースの実例5.BASEライブ
BASEライブ(ベイスライブ)は、個人がネットショップを手早く開設できる、無料のネットショップ開業サービス『BASE』の、ショッピングアプリに搭載されたライブ機能です。
BASEで出店しているショップやメーカーが出演して、商品の魅力をダイレクトにライブ配信できるという特徴があります。モデルやタレント、インフルエンサーといった限られた人以外でも配信できるという、ユーザーとの距離感がメリットと成り得ます。
ライブコマースをマーケティングに活用しよう
ライブコマースは、インタラクティブなライブ動画をリアルタイムで使用できる、現代の新しいマーケティング手法です。自社で扱う商品やサービスの特性を把握し、適切なライブコマースのプラットフォーム情報を収集して、効果的な販売展開をしていきましょう。
- 最新記事