
CDNという言葉を、Webサイト運営やコンテンツ更新する中で耳にする機会はあまりないかもしれません。ですが、昨今ウェブサーバーの負荷を軽減する目的で注目を集めているのがCDNです。
CDNは、導入することでキャッシュのコントロールを行い、サイト表示速度の改善に繋げることが可能です。
まだCDNを使ったことがなく、よく知らないという方に向けて、CDNの仕組みやメリット・デメリットなどをご紹介します!
CDNを利用する上で知っておきたい知識をまとめているので、ご利用検討中の方は是非参考にしてください。
目次
CDNってそもそも何?
CDNとは「Content Delivery Network(コンテンツデリバリーネットワーク)」の略称で、Webコンテンツを効率的かつスピーディーに配信するためのネットワークのことです。
CDNは、急激に増加するユーザー数や動画配信などの大容量ウェブコンテンツによって引き起こされるネットワーク負荷を解決するために作られた仕組みです。
このような負荷に対して、CDNはネットワークを最適化して、ホームページの表示やコンテンツの配信に問題が起こらないようにします。
身近なものにも使われているCDN
CDNが使われている身近な例としては、YouTubeやNetflix、Amazonなどの大手ウェブサイトが挙げられます。
たとえば、YouTubeの場合、世界中で多くの人々が同時に動画を視聴するため、多大な帯域幅が必要です。この問題を解決するため、YouTubeは世界中にCDNサーバーを配置し、ユーザーが動画を視聴するときには、最も近いCDNサーバーから動画を配信するようにしています。これによって、動画の視聴速度が速くなり、遅延が発生することを防ぐことができます。
また、Amazonの場合は、商品画像や動画、購入履歴などのコンテンツを配信する際にCDNを利用しています。これによって、ユーザーは速やかに商品画像や動画を閲覧することができ、購入体験をよりスムーズに行うことができます。
以上のように、CDNは大手ウェブサイトにおいて、大量のトラフィックを処理するために欠かせない技術となっています。
CDNの仕組みとは
ここからはCDNの具体的な仕組みを3つの項目に分けてご説明します。
CDNを知る上でわかっておきたい“DNS”
CDNを知る上で重要な要素の1つがDNS(Domain Name System)です。
DNSは、インターネットでドメイン名とIPアドレスを相互に関連付ける仕組みであり、CDNを理解するにあたって重要な前提知識です。
DNSには、Aレコードと呼ばれるドメイン名とIPアドレスを関連付けるリソースレコードがあります。また、CNAMEというリソースレコードが存在し、あるドメインを別のドメインに関連付けることができます。
CNAMEを利用することで、ドメインを変えず、別のサーバからコンテンツを配信できます。
たとえば、www.example.comのCNAMEをwww.example.jpに設定すると、www.example.comにアクセスしたユーザーは、そのままのURL表示でwww.example.jpにアクセスできます。
CNAMEは、URLをリダイレクトしているようなイメージがあるかもしれませんが、リダイレクトと違うのは、リクエストしたURLのまま別のサイトの内容を表示できる部分です。CNAMEを利用すると、自分のサーバを利用せずに自分のサイトと同じURLからデータを配信できます。
サーバーにも種類がある!?“オリジンサーバー”
CDNはDNS、キャッシュサーバー、オリジンサーバーの3つで成り立っています。
オリジンサーバーとは、元のデータが入っているサーバーのことを指します。
CDNを利用することで、ウェブコンテンツはオリジナルの保存先である「オリジンサーバー」へ直接アクセスすることなく、キャッシュサーバーを経由して配信されます。
ユーザーはDNSを経由してCDNが払い出したドメインにアクセスし、キャッシュサーバーからコンテンツが提供されます。
設定においては、CNAMEにCDNから払い出されたドメインを利用し、CDNの管理画面でオリジンサーバーのURLを指定するのが一般的です。
世界中に配置されている“キャッシュサーバー”
世界中に配置されたキャッシュサーバーは、CDNサービスプロバイダーによって管理され、CDNの利用者はこれらのキャッシュサーバーを活用することで、高速・高可用性のウェブコンテンツ配信を実現できます。
これらのキャッシュサーバーは、オリジンサーバーからデータを取得し、そのデータを自身のストレージにキャッシュすることで、同じデータが再度リクエストされた場合には、キャッシュから返却できます。
また、より近くにあるキャッシュサーバーからデータを取得できるため、高速なアクセスが可能です。
このような仕組みにより、ユーザーがウェブサイトやアプリケーションにアクセスする際に、キャッシュサーバーからデータを取得することで、オリジンサーバーへの負荷を軽減できます。
CDNを使うメリット・デメリット
CDNの基本的な概要や仕組みについて解説しましたが、ここからはCDNを利用する際に発生するメリット・デメリットをご紹介します。
- メリット① サーバーとネットワークへの負荷軽減
- メリット② サーバーレスポンスの速度改善ができる可能性
- デメリット① キャッシュ事故で個人情報漏洩の可能性
- デメリット② アクセスログ取得ができない可能性
- デメリット③ ファイル更新の遅延が発生する可能性
メリット① サーバーとネットワークへの負荷軽減
CDNを使用することで、オリジンサーバーからウェブコンテンツを取得したキャッシュサーバーがリクエストを受け付けるため、サーバーやネットワークの負荷が軽減されます。このため、オリジンサーバーやオリジンサーバーに接続されるネットワークの負荷を軽減できます。
メリット② サーバーレスポンスの速度改善ができる可能性
CDNを利用することで、オリジンサーバーにかわり世界中に配置されたキャッシュサーバーへと負荷が分散され、サーバーのレスポンスが改善する可能性があります。
デメリット① キャッシュ事故で個人情報漏洩の可能性
CDNはキャッシュサーバーがリクエストを受け付ける仕組みであり、会員ページや特定のプライバシーページの個人情報がキャッシュに残ってしまうと「キャッシュ事故」が起こります。
この事故を防ぐためには、キャッシュする対象を正しく選択することや、適切な対象であるかを随時確認することが重要です。
デメリット② アクセスログ取得ができない可能性
CDNサービスを利用する際には、アクセスログの取得に注意が必要です。中にはログを提供していないサービスもありますが、中にはログのダウンロード機能を提供しているものもあります。
ログが取得できない場合は、トラフィックの把握や問題解決が困難になるというデメリットがあります。
デメリット③ ファイル更新の遅延が発生する可能性
CDNを利用する際にファイル更新の遅延が発生する可能性があります。
これは、CDNがキャッシュを利用しているためで、ウェブサイト上のファイルが更新されても、CDNのキャッシュに反映されるまで時間がかかるためです。この場合、ファイルを削除することで解決できます。
たとえば、ウェブサイトの特定のファイルに問題が生じ、更新したい場合、CDNにキャッシュされた古いファイルが表示されることがあります。この場合、古いファイルを削除することで、CDNが新しいファイルを読み込むようになります。削除により、ウェブサイトの更新や改善がすばやく反映されるようになります。
ただし、削除は完全な解決策ではありません。
CDNが再度キャッシュするまでに時間がかかるため、ユーザーがファイルにアクセスすると、最初に遅延が発生することがあります。このような問題を避けるためには、CDNの設定を調整するなど、適切な対策を講じる必要があります。
CDN導入をおすすめする具体的な事例を紹介
CDNのメリット・デメリットを理解した上で、どのようなケースでCDNを利用すると効果的なのかを見ていきましょう。
具体的な導入事例として、以下の3つをご紹介します。
jQueryなどのライブラリーを多く使用しているWebサイトの運営
jQueryはJavaScriptのライブラリーであり、JavaScriptでよく使われるプログラムをまとめて提供しています。インターネット上で保管されているため、プログラムを部品のように取り出して使用できます。
CDNを利用することで、キャッシュサーバーにライブラリーのデータが保存されるため、オリジンサーバーの負荷が軽減され、Webサイトの表示速度を向上させることができます。
ライブラリーを多用するWebサイトでは、CDNを活用することが有効です。
WordPressのレスポンス高速化
WordPressを利用しているウェブサイトの数が増えている一方で、WordPressのサーバー負荷は大きく、ページの表示速度が遅くなることがあります。
WordPressの負荷が高い主な原因としては、WordPressが「アクセスを受け付けるたびにウェブページを生成する動的コンテンツ」だからです。あらかじめサーバーに保存されている「静的コンテンツ」とは異なり、サーバーへの負担が大きくなってしまいます。
そこでCDNを利用すれば、複製されたHTMLファイルがキャッシュサーバーに保存されて、オリジンサーバーでHTMLファイルの作成を繰り返す回数を減らすことができます。そのため、WordPressを使ったウェブサイトの負荷が減り、レスポンスを高速化できます。
このように、CDNを使ってWordPressの高速化ができることは、多くのウェブサイトにとって重要な問題であり、解決策の一つとなっています。
日常的に動画データを利用する
動画コンテンツは、画像やHTMLと比較して、データ容量が非常に大きくなるため、サーバーに負担をかけることです。
このため、動画を再生する際には時間がかかったり、途中で止まったりすることがあり、ユーザーにとっては最悪のデメリットと言えるでしょう。
CDNを利用すれば、オリジンサーバーの負担が軽減されます。
CDNによって、動画配信を高品質かつ安定的に行うことができるため、ユーザーの満足度も向上することが期待できます。
また、サーバーの負荷が大きくなると、動画を再生することができない、あるいは時間がかかってしまうことがあり、ユーザーが離脱する原因の一つになっています。
動画コンテンツを保有するオリジンサーバーの負荷を、CDNを利用してキャッシュサーバーに分散し、安定的に動画配信を行うことで、動画がスムーズに再生されることから、サイトを訪問するユーザーの満足度も向上することが期待できます。
代表的なCDN事業者とCDN提供レンタルサーバーは?
CDNを利用する場合、「CDNの事業者を利用する」「レンタルサーバーを利用する」の2つの方法があります。ここでは、CDN事業者とレンタルサーバーをご紹介いたします。
CDN事業者
代表的なCDN事業者の特徴をそれぞれご紹介します。
■Microsoft Azure
Microsoft Azureは、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングプラットフォームです。AmazonのAmazon Web Services(AWS)やGoogleのGoogle Cloud Platform(GCP)と並ぶ人気のクラウドサービスです。
Microsoft Azureの料金設定は、初期費用なしで使用した分だけ支払う「従量課金制」となっています。AzureのCDNは、オリジンサーバーの負荷を軽減し、高速かつ安全・安心な配信が可能です。
また、システムやサービスが必要に応じて拡張可能な構造を提供するため、高トラフィックのウェブサイトやアプリケーションでも高品質な配信を実現できます。
■Akamai
Akamaiは世界最大規模のCDNプロバイダーの一つです。
現在、世界100か国以上に4万以上のサーバーを展開し、高速なコンテンツ配信を提供しています。
高速で安定したコンテンツ配信が可能で、世界中に配置されたサーバーの中からユーザーのリクエストに応じて最適なサーバーを自動的に選択することで、遅延を最小限に抑えた高速な配信を実現します。
また、セキュリティ機能に優れており、DDoS攻撃などのセキュリティリスクからウェブサイトを守ることができます。
しかし、Akamaiは大量のコンテンツを配信することに特化しており、導入コストが高いため、小規模なウェブサイトやアプリケーション、または限られた地域に配信する場合は利用に適していません。
■Amazon CloudFront
Amazon CloudFrontは、Amazon Web Services(AWS)が提供するCDNです。
Amazon CloudFrontを利用するメリットとして、グローバルに展開されたCDNを利用することで、ユーザーに近い場所からコンテンツを配信できるため、高速で安定した配信が可能です。
また、Amazon Web Services(AWS)の他のサービスと統合することで、シームレスな運用が可能であり、AWSが提供するセキュリティ対策を活用することで、安全な配信が可能です。
しかし、1か所に集中しているアクセスが多い場合、リージョン単位での配信設定が難しいため、効果を発揮しにくい場合があると言われています。
また、負荷分散のためのDNSラウンドロビン方式が採用されているため、接続先のIPアドレスが変更されることがあり、動的なコンテンツの配信に向いていないとされる場合があります。
■Cloudflare
Cloudflareの特徴は、そのサービスが無料で提供されることです。
CloudflareのCDNは、世界中に散在する200以上のデータセンターを利用しており、高速で信頼性の高いコンテンツ配信を提供しています。
また、簡単に導入でき、柔軟な設定が可能である点も魅力的です。膨大な量のデータを分析して、セキュリティの脅威を検知し、防御する機能も持っています。
■CDNetworks
CDNetworksは、韓国発のグローバルなCDNサービスプロバイダーであり、2000年に設立され、現在、世界中で1,500以上の顧客にサービスを提供しています。特にアジア地域において強力なネットワークを持っていることが特徴です。
CDNetworksはDDoS攻撃対策にも特化しており、オンラインショップや金融機関など、セキュリティリスクが高い業種の企業にも適しています。
■Fastly
Fastly(ファストリー)は、グローバルに展開されたクラウドネイティブなCDNサービスを提供する企業です。
Fastlyの特徴は、カスタマイズ可能なコンテンツ配信規則(CDR)を備えていることです。これにより、リアルタイムでコンテンツの配信を最適化することが可能です。また、DDoS攻撃などのセキュリティ対策も提供しています。
大規模なトラフィックに対応したCDNサービスを提供しており、特にオンラインストリーミングやeコマースなど、リアルタイムで高速なコンテンツ配信が必要な場合に向いています。
さらに、API GatewayやEdge Computingなど、コンテンツ配信以外のサービスも提供しているため、複雑なアプリケーションの開発にも利用されています。
レンタルサーバー
CDNを提供しているレンタルサーバーと特徴をそれぞれご紹介します。
■エックスサーバー
エックスサーバーでは、自社のWebサイトの表示速度を向上させ、同時に安定させるために「Xアクセラレータ」というCDNサービスを提供しています。
このサービスには、2つのバージョンが用意されており、自社のWebサイトの状況に応じて使い分けることがおすすめされています。
- Xアクセラレータ Ver.1:静的ファイル高速化と同時アクセス数拡張
- Xアクセラレータ Ver.2:1の内容+PHPプログラムの高速化
また、すでにエックスサーバーを利用している方は、無料でXアクセラレータを利用できます。
■さくらのレンタルサーバー
さくらのレンタルサーバーは「コンテンツブースト」というCDNサービスの提供をしています。月額数千円程度で利用可能な複数のプランが用意されており、予算が限られている企業でも手軽に利用できます。
管理画面も直感的に操作できるため、CDNサービスを初めて利用する方にもおすすめです。
■SEEDS Hosting Service
SEEDS Hosting Serviceは、1GBあたり約9円の課金、月額の管理費用が5,000円という低コストで利用可能なCDNサービスです。海外にもCDNの拠点があり、越境ECや大規模なWebサイトなどの運営にも利用できるおすすめのサービスです。
CDNを適切に利用してWebサイトの最適化に繋げましょう
CDNは、ウェブコンテンツの配信を効率的に行うためのネットワークです。ウェブサーバーの負荷を軽減し、ホームページの表示速度を上げることができます。
さらに、CDNはキャッシュ機能を備えているため、同じコンテンツがリクエストされた場合には、キャッシュからコンテンツを配信することで、ウェブサーバーに負荷をかけずに配信できます。
WordPressのような負荷の高いウェブサイトや、動画配信を行っている場合には、CDNの利用が特に効果的です。CDNの概要を理解し、必要性を判断した場合は、CDNサービスの利用を検討してみることをおすすめします。
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