
レイアウトとは元々、[lay out]=[lay(動詞)+out(副詞)]で「広げる」「設計する」という意味を持つことばです。デザインでいう「レイアウト」は、あるスペースに何かを配置することを指します。
レイアウトに触れる場面は、実は私達の生活の中にたくさん潜んでいます。例えば、机の引き出しの中のものの配置を決めることもレイアウト。町づくりで、郵便局や学校、住宅などの場所をどこにするか決めることもレイアウトなのです。町づくりで一番大事なことは「暮らしやすさ」です。
レイアウトは、この「やすさ」を考えることが重要です。印刷物のレイアウトで大切なのは「分かりやすさ」です。
この記事では、ポスターやチラシなどの印刷物の内容を、見る人により的確にわかりやすく伝えるためにレイアウトの手法をご紹介していきます。
目次
レイアウトの役割とは?
手法の説明に入る前に、レイアウトの役割について考えてみましょう。レイアウトを分かりやすくする目的はなんだと思いますか?
それは、見る人によい印象をもってもらうことです。良い印象を持ってもらうと、
・新商品の広告の場合・・・その商品がより多くの人に知られて売上が上がる
・映画のポスターの場合・・・来場者数が増える
・雑誌の場合・・・読者が心地よく有益な情報を得られ、また読みたいと思ってもらえる
その為には、雰囲気の演出や情報の伝え方に工夫が必要です。雰囲気の演出と一言にいっても、「しずかな雰囲気」「インパクトのある表現」「ゆったりした感じ」など様々な手法があります。その中から、その印刷物の内容に最適な演出をよく考えて、見る人の気持ちを揺さぶる事ができれば、そのレイアウトは役目を果たしていると言えるでしょう。
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活用できるレイアウトの手法
ジャンプ率
ジャンプ率とは、配置した要素の大小サイズ比のことで、大きな要素と小さな要素の差が大きいとき、「ジャンプ率が高い」といいます。反対に、大小の差がそれほど無い場合は、「ジャンプ率が低い」状態です。ジャンプ率が高いと、躍動感や賑やかさを感じさせることが出来ます。
逆に、落ち着きを表現したい場合などは、ジャンプ率が小さくしましょう。
図形や画像だけではなく、文字にもジャンプ率を応用することができます。強調したい見出し部分などの文言を大きくしたり、接続詞(例「〇〇と〇〇」の「と」)を小さくすることで緩急が生まれ、内容が素早く見る人に伝わります。
【向いている内容】
要素が多めで賑やかな雰囲気
視線を誘導
配置する要素には、読み進めるべき順番が想定されているものです。その順番を妨げず、自然に視線を誘導するのもレイアウトの大事な役目です。また、配置の工夫や余白の活用などでスムーズな流れがつくられたレイアウトは、内容を理解し整理する手助けにもなります。
基本的に紙面を見た時の人の視線は、上から下に移動します。また、右開きの本では右から左へ、左開きの本では、左から右への視線の流れが生じます。パンフレットや冊子などのページレイアウトでは、この流れに沿って要素を配置するとよいでしょう。
この流れと異なる動きのレイアウトをする場合は、少し工夫が必要です。例えばですが、商品とその商品の説明文が載っているページで、読んでいる説明文がどの商品のものなのかわかりづらい場合があったとします。その場合は、説明文から引き出し線(矢印)などを引っ張ることで、スムーズに説明文と商品を結びつけることが出来ます。
その他に、文章の多いレイアウトの場合、段落の頭文字だけを大きくする「ドロップキャップ」という手法を使うことで、読みやすくすることが出来ます。
【向いている内容】
要素が多めで複雑なレイアウト
逆三角形
レイアウトでは、要素を配置したときの紙面全体の構図への配慮も大切です。レイアウトに慣れないうちには、典型的な構図を参考にすると、バランスよく仕上げられます。その一つが逆三角形の構図です。
逆三角形の点に配置する要素を大きく、その他を小さくすること手法で、紙面に動きを出しながら、ほどよい緊張感を生み出し、全体を引き締めることが出来ます。逆三角形は不安定な構図なので、もうすこし安定したイメージを表現した場合は、逆二等辺三角形にすることで、緊張感を和らげることが出来ます。また、安定した三角形の構図では、落ち着きを表現できます。
【向いている内容】
3つ以上の要素がある場合
ユニット化
ユニット化とは、商品や店舗を紹介する紙面などで、一つの情報を小さな枠組みに割り当て、あらかじめ決めておいた枠内の配置ルールに沿って、レイアウトする手法のことです。
ユニット化のメリットは、膨大な情報をきれいにまとまって見せられることです。枠で囲む以外にも、線で区切ったり、境界部分の余白をしっかりとることでも区分けすることが出来ます。ただ、ユニット化したレイアウトは機能的な反面、単調にも感じられやすいため、ユニットを変形させたりデザインを工夫して遊びを加えましょう。
【向いている内容】
要素が多めで、情報がひとつひとつ明確に区分けできる場合のみ。
グリッドシステム
グリッドシステムとは、紙面を水平・垂直に等分割して格子状のガイドをつくる手法で、冊子などで読み物が複数ページで展開されるような場合、このガイドに沿って配置を行うと、レイアウトが統一され読みやすくなります。
ページ内でグリットに沿わせた箇所が多いほど新聞のような堅い印象になり、部分的にずらす箇所を増やすほど動きが生まれます。
【向いている内容】
要素が多め
パターン化
同じ図形を繰り返し並べるなど、規則的な反復表現のことをパターン化と言います。心地よいリズム感を生み出すパターンは、テキスタイルのデザインでよく見かける手法です。紙面の場合では、背景にドットやストライプを敷いたり、連続写真でストーリー性を生み出す手法で使われます。
等間隔で配置したパターンのように規則性を強調すると、まとまりを感じさせることが可能です。パターン表現は単調になりがちですが、アクセントを入れたり、1つおきに図形の色やサイズを変えることで、規則的な中にも変化をつけることができます。
【向いている内容】
要素が多めで賑やかな雰囲気
アクセント
アクセントを効果的に機能させるためには、一瞬見ただけでわかる大胆な変化の表現が必要です。アクセントの数は増やしすぎると、散漫でインパクトが弱まり逆効果になるので、数は絞りましょう。アクセントの例をふたつ紹介します。
・繰り返しのパターンの中に一箇所だけ違うデザインの要素を置く
・モノクロのレイアウトに一点だけカラーの要素を置く
【向いている内容】
すべての要素に効かせられるが、要素が多い場合は工夫が必要。
ホワイトスペース
ホワイトスペースとは、紙面にある余白のことです。なんとなく余ってしまったスペースではなく、意図的につくられたものです。
ゆったりした静かな雰囲気や、上質さの演出、視線の滞在時間を長くするなど、余白は多くの役割を果たします。注目させたい要素の周りに広く余白をつくり、要素自体もシンプルなデザインにすることで余白を最大限生かすことができます。
全く余白のない紙面は読みづらく、窮屈で圧迫感を感じさせます。余白を多くとる部分と要素を集中させる部分を紙面の中にバランス良く盛り込みましょう。
【向いている内容】
要素が少なめで静かな雰囲気
シンメトリー
シンメトリーは、古くから使われている定番レイアウトのひとつで、図形を反転させて構成される左右対称・上下対称や、図形を回転させて構成される点対称などがあります。上質で静かな雰囲気を出すにはもってこいのレイアウトです。
また、写真や図形だけでなく、メニュー表などの文字のレイアウトにも使えます。書体も上品な明朝体やセリフ体、筆記体などを用いると、より高級な印象に仕上がります。
【向いている内容】
画像が少なめで静かな雰囲気
対比
2つの要素を並べると、人はそれらを見比べて何らかの関係性を読み取ろうとします。この対比の効果をうまく生かすことで、それぞれを強調したり、時間の流れなどのストーリー性を演出できます。サイズ差や色の違いなど、対比させたい要素を的確にレイアウトすることがコツです。
対比の例をふたつ紹介します。
・リアルな人の顔の写真と、その人のイラストの顔を隣り合わせて配置する
・場所で違う時代にとったふたつの写真を上下に配置する
【向いている内容】
要素が少なめでシンプルなレイアウト
まとめ
以上、10個のレイアウト手法をご紹介しました。今まで、何も考えずになんとなくレイアウトをしていたデザイナーの方は、まずはこの10個の手法の中から当てはまるものを選んでデザインするといいのではないのかなと思います。
レイアウトを上達させるには、できるだけ多くのデザインを見て、自分がいいと思うデザインにはどういうレイアウト手法が取り入れられているのか、『考えながら見る』ことが大事です。
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