
がやがやした場所にいても、自分の名前を呼ぶ声にはすぐに反応できる。情報量の多い街中にいても、今、気になっている商品がやたらと目に留まる。
こんな経験をしたことはありませんか?これを「カクテルパーティー効果」と呼んでいます。
このカクテルパーティー効果を理解し脳を鍛えることで、コミュニケーション能力のアップや営業・接客などの仕事においての成果が期待できます。
そこで、今回はカクテルパーティー効果について解説し、さらにビジネスシーンや日常生活での活用方法をご紹介します。
目次
カクテルパーティー効果とは?
一見お酒に関する用語のように聞こえますが、「カクテルパーティー効果」は心理学用語です。
なぜ、このような名前が付けられているのでしょうか。カクテルパーティー効果の意味について、例や実証実験を用いてご説明します。
こんな経験ありませんか?カクテルパーティー効果が起こる例
自分が大声で話している時でも、部屋の隅にいる人たちの会話が聞き取れてしまう。電車の中で疲れてうとうとしていても、最寄り駅に着くとすぐに目が覚める。
「カクテルパーティー効果」はこのように、集中しているわけではないのに自分に関係のある情報には、反応できてしまう現象のことをいいます。「選択的注意」とも呼ばれており、パーティーのような騒がしい場所でも必要な情報を選択できることから名付けられました。
カクテルパーティー効果の実証実験
カクテルパーティー効果を提唱したのは、心理学者のエドワード・コリン・チェリーです。
彼は被験者にヘッドホンを装着し、左右で異なる音を同時に聞かせ、片方の音だけに集中するよう指示しました。
すると被験者は、意識を集中させていない方の音が聴き取れなくなったのです。
さらに、集中していない方の音から被験者の名前を呼ぶと、すぐに反応したそうです。
以上の実験から人間は自分の注意を向けた情報を優先的に取り入れていることが実証されました。
カクテルパーティー効果がもたらす影響
五感で得る情報はカクテルパーティー効果により、聴覚以外にも様々な部分に影響します。
心理的影響
落ち込んでいるときや自分に自信がないときは、周りの目が気になってしまいますよね。
そんなときに周囲の声が気になり、自分に関係がある内容ではないかと思ってしまうのは、ネガティブな感情を必要な情報だと脳が判断しているからです。
カクテルパーティー効果は心の状態にも影響を及ぼしているのです。
視覚的影響
ある特定のものを意識していると、普通に生活する中でも同じような情報に自然と気付きやすくなったりしませんか?
耳から得る情報と同様に、目で見る情報も自分が興味を持っているものを無意識のうちに選択しているのですね。
「カラーバス効果」という呼び方もあり、これを活用すれば自分にとって必要性の高い情報をキャッチしやすくなります。
ビジネスやマーケティングでカクテルパーティー効果を活用
無意識のうちに起こっているカクテルパーティー効果を理解し上手く活用すれば、あらゆる情報の取捨選択が重要であるビジネスシーンでも役立てられます。
ここからはカクテルパーティー効果の活用方法を具体的に紹介していきます。
ターゲットを絞ってアピールする
例えば店頭で売り込みをしているとして、ただ単に「いらっしゃいませ」「お得ですよ」と言うよりも「〇時までのタイムセール中です」「新商品が入荷しました」といった言葉で呼び込むほうが、人の頭の中にイメージを抱かせやすいので、より相手の注意を引けます。
さらに、自分にとって必要な情報だとターゲット自身に認識させることが大切です。
性別や年齢、職業や住んでいる地域などの、人それぞれがもつ属性を盛り込むことで、ターゲットは自分の事だと捉え、意識を向けやすくなります。
「〇〇県にお住まいの方必見!」と「〇〇県〇〇市にお住まいの自営業の方必見!」だと、該当者の場合興味が惹かれるのはどちらでしょう。おそらく後者ではないでしょうか。
相手の心理に訴える言葉を使う
「保湿成分たっぷりの化粧水」という宣伝文句であれば、さらにピンポイントに絞り「乾燥が気になる40代の女性におすすめ、保湿力抜群のしっとり化粧水」とすることで、悩みが当てはまる人に意識を向けさせ、効果的に興味を引けます。
このように相手の悩みや希望、さらには連想するイメージといった心理状態を刺激し、ターゲットのニーズに寄り添うことも、営業職やマーケティングなどには有効です。
日常生活でカクテルパーティー効果を活用
ここまでビジネスにおけるカクテルパーティー効果の活用方法をご紹介しましたが、もちろん日常生活でのコミュニケーションにも取り入れられます。
コリン・チェリーが行った実験でみられたように、人は自分の名前に即座に反応できるので、自分の名前を呼んでくれる人に良い印象を持ちやすいのです。好きな人や仲良くなりたい人がいるなら、積極的に相手の名前を呼んでみると、自然に相手が自分を意識するようになるかもしれませんよ。
また、相手が興味を持っていることを話題にするのもよいでしょう。同じ話をしているようでも、意識を向けているポイントが違っていると、共感したり話を掘り下げたりすることは難しくなります。
相手の話に耳を傾け関心の先を合わせることは、よりよい人間関係を築くために大切なことですね。
カクテルパーティー効果を鍛えるには
カクテルパーティー効果を意識しトレーニングすることで、情報処理能力が上がるだけでなく、相手に正しく理解してもらうための伝達スキルを高めることもできます。
誰でも日常的にできる脳のトレーニングをいくつかご紹介します。
耳を研ぎ澄ませてみる
聴く力を高めるには、ファミレスや商業施設などの騒がしい場所で他人の会話に耳をすませるのがよいでしょう。自分から少し離れた場所にいる人の話に意識を集中させると、集中すればするほど他の音が聞こえなくなるはずです。
また音楽を聴くときにもトレーニングができます。曲の中で特定の楽器の音だけを、注意して聴き取ってみましょう。特定の音に集中することで曲のイメージが変わったり、アレンジに気付いたりと、新しい発見があるかもしれません。
相手への伝え方を増やしてみる
次に伝達能力を高めるためのトレーニングです。相手がイメージしやすいように工夫して話すことがポイントです。
例えば「何食べに行く?」という質問には「和食?中華?イタリアン?」などの選択肢を付け加えてみましょう。こうすることで、自分でも情報を分析し整理できるので、自分の意図を的確に伝達する能力のアップに繋がります。
具体的な情報を引き出してみる
普段あまり意識しないことにも目を向けることは、カクテルパーティー効果を鍛える上でとても大切なことです。日頃、知人や職場の人と挨拶するときに、相手の様子を意識していますか?
「その服いいね」「少し焼けたね」「表情が暗いけど、なにかあった?」というように、服装・表情・雰囲気などからその人の状態を想像し、さりげなく声をかけてみてください。
じろじろと観察するのではなくぱっと見た印象で判断し言葉にすることで、感覚はいっそう鍛えられます。
つまり、些細な変化に気付くことこそが選択的注意であり、意識して情報を絞るトレーニングになるのです。
まとめ
今回はカクテルパーティー効果について、意味や活用方法をご紹介しました。カクテルパーティー効果は私たちの身近なところで発揮されているので、どのようにして情報を受け取り、どのように伝達するかに密接に関わっています。
カクテルパーティー効果をビジネスに活かすには、伝えたい内容やサービスを自分に関係のある情報だと相手に認識してもらうことが大切です。聴き方と伝え方を工夫し、さまざまなシーンでカクテルパーティー効果を上手に活用しましょう。
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