
私たちが日常読み書きする日本語は、昔の日本人達がいろいろな思いを込めて作られ、現代まで伝え続けられた「文化」であり「言葉」です。日本語の中でも、美しい日本語を集めてみました。
目次
自然に恵まれたことで生まれた美しい日本語
日本は、四季に恵まれた美しい自然、豊かな風土をもち、季節ごとに自然を表現する言葉があります。
古今和歌集や百人一首に登場する千年よりはるか昔に作られた季語の組み合わせは、現代の日本人が聞いても情景を想像することができる素晴らしい言葉です。
中でも、自然や現象を表す言葉で特に美しいと感じた日本語をまとめてみました。
二十四節気・七十二候に関係する言葉
二十四節気は、冬至や春分など1年を太陽の位置にあわせて二十四等分して名称をつけたものです。また、二十四節気を更に細かく設定した季節を表す言葉として、中国で考案され日本の気候風土にあうよう改定された、七十二候というものがあります。
- 白露
- 魚上氷
「白露(はくつゆ・はくろ)」は、9月6日ごろにあたる二十四節気です。
夏の盛りが過ぎてきて、少しずつ大気が冷えてくることで草木の葉に秋の到来を告げる白い露ができ始める季節のことをいいます。
白露は字面でも音の響きでも美しく、百人一首でも読まれています。
「魚上氷(うおこおりをいずる)」は、2月14日ごろにあたる七十二候です。
凍った川や湖も春の兆しに解け出し、割れた氷の間から冬の間じっとしていた魚達が勢い良く飛び跳ねる時期といわれています。
季節に関係する言葉
日本の四季ごとの自然現象を表した美しい日本語をご紹介します。
春
- 薄氷
- 風光る
- 春雷
- 花衣
「薄氷(うすらい)」は、冬が過ぎ去り春が近づくことで水面を覆っているうっすら覆っている氷、解け残った氷のことです。
氷は冬に比べ薄くなり、消えやすく淡く儚い印象があります。
「風光る(かぜひかる)」は、春になると日差しがどんどん強まり、吹き渡る日差しだけでなく風もが光って見えるという例えです。
澄み渡る空気が光って見えるようでワクワクしますね。
「春雷(しゅんらい)」は、二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」(3月5日ごろ)のころに、年で改まり初めて鳴る雷のことです。春先の寒冷前線の通過に伴い、春の到来を告げる雷です。
「花衣(はなごろも)」は、桜がさねの衣のことを言います。
表は白、裏は紫または二藍の色の衣のことを指し、花見に着る晴れ着のことも指します。
花衣の他に、「花菖蒲」「山吹」など平安時代には、着物の色の重ね具合を変えて楽しんでいたそうです。
夏
- 朝凪
- 蝉時雨
- 薄暑
「朝凪(あさなぎ)」は、夏の晴れた朝、陸風と海風からの風が入れ替わる時にピタリと風が止むときのことを言います。夕方にも同じ現象が見られると「夕凪」といいます。
「蝉時雨(せみしぐれ)」は、たくさんのセミが、今いる場所で鳴き止んだかと思うと、違うところでまた一時、盛んにセミが鳴く様子を、時雨(ふったりやんだりする雨)に例えた言葉です。
「薄暑(はくしょ)」は、初夏のやや汗ばむような暑さのことを指します。
まだじっとしている分は暑くありませんが、道を歩くと涼しい風や木陰が恋しくなる時期にあたります。
秋
- 鰯雲
- 灯火親しむ
- 山粧う
- 桜紅葉
「鰯雲(いわしぐも)」は、巻積雲の俗称です。
巻積雲は、白色の碁石を敷き詰めたような非常に小さな雲が、多数群れをなしている雲です。秋空に斑点状に広がり、イワシが群れるように見えることからついた名です。
「灯火親しむ(とうかしたしむ)」は、爽やかな秋の季節に灯火の下で読書をするのに適した季節であることを指します。
薄明かりの下で本をよく風景が目に浮かびますね。
「山粧う(やまよそおう)」は、山の木々の葉が紅葉し、化粧をしたように見えるさまのことを指します。
「桜紅葉(さくらもみじ)」は、秋になって緑色だった桜の葉が紅葉し、紅葉のようになるさまを指します。
冬
- 風花
- 樹氷
- 山眠る
「風花(かざはな)」は、晴れた日や風が吹き出す前などに、舞うように降る粉雪のことです。北国では、本格的な冬の前触れとされています。
「樹氷(じゅひょう)」は、冷えた雲や霧の粒が、木の枝に吹き付けられ、木の枝一面を凍りつかせたことを言います。
真っ白な羽毛状の氷片がつく樹氷を太陽の下で見ると、きらきらと光を反射し自然の織りなす幻想的な風景は一見の価値ありです。
「山眠る(やまねむる)」は、山々の木々が落葉してしまい、冬の日差しの中で眠ったように静まり返っているさまのことを指します。
雨に関係する言葉
日本には「雨」を表現する言葉が外国に比べてたくさんあります。
日本は諸外国に比べて雨がよく降る風土なため、独自の表現がとても多いです。
- 小夜時雨
- 篠突く雨
- 白雨
- 氷雨
- 驟雨
「小夜時雨(さよしぐれ)」は、夜に降る時雨のことです。
※「時雨」は秋の終わりから冬のはじめに振ったり止んだりする小雨のことです。
「篠突く雨(しのつくあめ)」は、篠竹(細かく群がり生える竹)を束にして地面を突き降ろすように、激しく力強く降る大雨、豪雨のことをいいます。
「白雨(はくう)」は、明るい空から降る雨のことで、にわか雨の別名です。
突然の激しい雨により、雨が白くみえるさまを表現しているとも言われています。
「氷雨(ひさめ)」は、冷たい雨のこと、またみぞれ(雪と雨が混じって降る状態のこと)のことを言います。
「驟雨(しゅうう)」は、にわか雨のことを指します。
急に雨が降り出し、強弱の変化が激しい雨を繰り返しながら、急に降り止む雨のことをいいます。雷を伴うこともあります。夕立も驟雨ですが、夕立と違い驟雨は時間の制限がありません。
花に関係する言葉
日本には、四季折々の色鮮やかな花を表すことわざや言葉があります。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、花に例えて美しい女性の容姿や立ち振舞を表した内容の言葉として有名です。
- 花の兄
- 花の弟
- 花の王
- 花の浮橋
「花の兄(はなのあに)」は、1年の1番初め、他の花より咲き始めることから梅のことを言います。
「花の弟(はなのおとうと)」は、1年の中で1番最後、他の花より遅れて咲き始めることから菊のことを言います。
「花の王(はなのおう)」は、花の中で最も豪奢に咲き、妖艶なまでの優雅さをもつ、牡丹のことを指します。牡丹は百花の王とも呼ばれ、古くから美しさが讃えられています。
しかし、「花の王」牡丹は中国のお話で、日本だと桜になるのが国民性がでて面白いところです。
「花の浮橋(はなのうきはし)」は、散った桜の花びらが、水面に敷き詰められ浮かんだ様子を浮橋に見立てて表現します。
まとめ
日本には季節や風土にあわせた美しい日本語が、教育現場だけでなく、普段の生活やニュースの中にもあふれています。
ぜひ普段の生活の中でそっと耳をそばだてて、古来よりある美しい日本語を意識して聞いてみて下さい。
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