マス広告の特性を再確認

インターネットの普及によって広告手段が変化していく中、従来のマス広告がその効果を問われています。地方のラジオ局に在籍していた時は、ラジオのCM予算を獲得することが私の仕事でした。

ですが、ひとつのメディアに縛りがある状況では、クライアントの課題解決に限界が生じます。クライアントのために、様々な手段を講じられる広告会社。私はそういう仕事、存り方に惹かれました。

現場での気づき

過去、提案を断られる席で多く聞いた「予算がない」という言葉。確かに年間で、広告予算を計上していない企業もあるでしょう。本当に予算がないというのが断る一番の理由だったのでしょうか。広告会社に転職し間もなく同行した提案の席で、そうではなかった事を実感しました。「予算がない」のではなく、「投資に見合う価値」を提案出来ていなかったのです。

マーケティングデータをもとにした、メリットのある提案を受けて、納得したクライアントが広告手段の見直しに社内調整をしてくれることは、前職ではあまり経験できなかったことです。クライアントのサービスを理解し、深く関わることで生じる責任感に逃げずに向き合い、クライアントと共に目標を達成できた時の喜びは、媒体営業職では得られにくいものを感じます。

「広告は時代を表す」とよく言われます。広告会社電通発表による2015年度の日本における広告費によると、対前年比でマスコミ4媒体(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)が、97.6%、インターネット広告が110.2%となっています。今後もインターネット広告の拡大が予想されますが、マス媒体在籍経験者として今一度、それぞれの媒体特性について記してみたいと思います。

4マス広告の媒体特性

新聞広告

新聞は定期購読として、決まった所にほぼ毎日届けられます。社会的信用性の高さから、企業の信用獲得効果が期待できます。住宅や車、金融商品といった、高額かつ信頼感が欠かせない商材の広告に多く活用されており、1社が地域での圧倒的シェアを獲得しているケースがあります。若年層の新聞離れや出稿費用が比較的高いところが難点です。

テレビ広告

音と映像で視聴者にインパクトを与えることが出来る広告です。放送時間帯や放送番組を選ぶことで、ある程度のターゲットを絞ることもできます。出稿形態は主に番組提供などの「タイム」と、任意の期間や本数で放送できる「スポット」の2種類があります。

ブランド訴求など、イメージを刷り込みの場合には「タイム」が、キャンペーンや新商品の告知などには「スポット」が有効です。多くの消費者が触れる媒体として、繰り返し視聴によるブランドイメージ構築に期待できますが、録画視聴によるCM飛ばしや視聴率低下が課題に挙げられています。

ラジオ広告

番組パーソナリティとリスナーとの繋がりに特徴のある媒体です。運転中や仕事中などに聴く、「ながら接触」がメインとなります。「習慣性メディア」として、瞬発力よりも継続的なCM放送によるイメージ訴求に効果的です。

ラジオCMはテレビCMと同様、「タイム」と「スポット」に大別されます。TVなどに比べると低予算で出稿出来るというメリットや、リスナーとの関係性がSNSに似た感覚ということもあり、インターネットメディアとの相性が良いと言われています。ただし、テレビと比較した際の絶対的な聴取者数の少なさや、映像が無いことでのCMインパクトの小ささが弱点となっています。

雑誌広告

消費者の生活スタイルをテーマに編集された媒体です。それぞれに固定の読者を抱え、ターゲットが読むことが予想される種類の雑誌に掲載することで、効率よく情報を届けることができます。最近では豪華な雑誌付録目当ての読者も多く、同じ価値観を持つもの同士のクチコミ促進効果も見られています。

地域のファッションやグルメなどにスポットを当てた、「タウン誌」と呼ばれるものが地方での主な対象となります。制作日程の都合上、ある程度事前からの出稿計画が必要となり、急なイベントやキャンペーン訴求には不向きです。
広告媒体として大きな役割を担ってきた4マス媒体。読む人、見る人、聞く人の減少から、以前よりもその広告価値は低下していると言わざるを得ません。生活者の情報収集手段においてインターネットが主役となった今、長所に特化した存在への変化が必要なの
ではないでしょうか。

まとめ

デジタルやアナログといった、手法にばかり目を向けるのではなく、自分たちに求められている役割をしっかりと考えること。テレビなら、ローカル制作番組の放送比率を高めて、映像の力で地域情報をとことん発信していく姿勢であり、FMラジオなら、音楽の力を活かしたより「ながら聴取」しやすい、BGM的な編成に思い切って変えてみるなど。

他媒体と同じことをせずに、ポリシーのある発信。そこにこそ、地域のマスメディアの価値があるはずです。見る人、聞く人、読む人がいてこそのメディアであることを改めて考えて、変化に期待していきたいと思います。

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筆者

Y.Nakahigashi

ラジオ局勤務を経て現職。若いスタッフが多いオフィスに、若干落ち着かない40代。見るもするもの野球好きで、少年野球の指導にも携わる。週末に野球をとるか家族をとるか。その選択が現在のもっぱらの悩みとなっている。いつまで経っても100を切れないゴルフと、知人から半ば強制的に連れて行かれる山登りを少々たしなみ、人畜無害の外見からか、知らない人に道を尋ねられることも多数。好きな動物は猫。好きなテレビ番組は「旅サラダ」。

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