
近年、世界でも”巣ごもり消費”が広がり、世界中でオンラインでのお買い物が定着しつつあります。日本企業にとっては「越境EC」という事業は海外ビジネスとして身近になってきたと言えるでしょう。
本記事では、越境ECの基礎知識を踏まえ、取り組む際のメリット・デメリット、始める手順を分かりやすくご紹介します。
越境ECとは?
越境ECとは、インターネットを通じて販売のやりとりをする国際的な電子商取引です。※EC(イーシー)とはElectronic Commerce(エレクトロニック コマース)の略で、日本語では電子商取引の意味を持ちます。海外顧客をターゲットにしたECサイトを構築し、国境を越えて商品を販売することを意味しています。
越境EC市場の現状
越境ECの市場規模は現在でも拡大を続け、日本・米国・中国などでも増加し続けています。
下記のデータは経済産業省が公表しているものです。
越境電子商取引の市場規模
国 |
越境EC購入額 | 伸び率 |
日本 |
3,175億円 |
14.8% |
米国 |
1兆5,570億円 |
11.8% |
中国 | 3兆6,652億円 |
12.3% |
出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html
上記より、日本の越境EC利用規模に比較すると、アメリカでは日本の5倍近く、中国は12倍以上も市場が伸びていることが分かります。
越境ECとインバウンド
日本において、訪日外国人旅行者数、および訪日外国人旅行者の消費額が増加傾向にあることから、インバウンドへの注目は高いと言えます。日本に来日した際に興味を持った商品や実際に購入した商品を、その後、越境ECで購入することが多く、この傾向はEC業界でも注目市場と言えるのではないでしょうか。
2012年頃から訪日外国人旅行者数が増え続けていることが、日本政府観光局(JNTO)が発表しているデータでも分かります。興味がある方はチェックしてみて下さい。
日本政府観光局(JNTO):https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/index.html
越境ECのメリット・デメリット
越境ECのメリット
越境ECを運営するメリットには、下記のようなものが挙げられます。
- 海外で実店舗を置かないことで、低コストで運用できる
- 商圏が広がり、新規顧客が増え、売上が伸びる可能性がある
- 世界中でITが加速し、参入しやすい環境やサービスが増えた
- 言語対応・決済・専門的知識を代行するサービスが増えた
越境ECのデメリット
越境ECを運営するデメリットには、下記のようなものが挙げられます。
- ターゲットとする国の言語にしっかりと翻訳する必要がある
- 物流・配送の問題や関税、国際輸送に関する知識も必要である
- ターゲットとするその国の決済方法を導入する必要がある
越境ECを始める際の手順
商品を準備する
最初のステップは「どの商品」を扱うかです。全ての商品が売れるとは限りませんが「品質」と「安全面」では日本の商品は海外でも人気です。また、国によって人気のカテゴリーは異なってくるので、事前にターゲット国の調査・分析をしましょう。
ターゲットを決める
次のステップでは「どこでその商品を販売するか」を決めましょう。販売しようとする商品がターゲットの国の法律に基づいて輸出や販売ができるのか、関税や手続きはどのようになっているのか、その他規制はあるのかなど調査しながら、ターゲット国を決める必要があります。
規制や関税などについては、JETRO(ジェトロ)のホームページから各地域別に合わせて詳細を調べることができます。
↓↓【JETRO】のページはこちら↓↓
https://www.jetro.go.jp/world/trade.html
↓↓【日本郵便】のページはこちら↓↓
https://www.post.japanpost.jp/int/use/restriction/index.html
上記JETROのページでは関税や輸出手続きなど、オンラインや電話で相談することが可能です。
海外への出店方法
商品とターゲット国が決まったら、最後のステップは「どこで商品を売るか」です。
国内外のショッピングモールを利用する(Amazon、天猫国際など)
越境ECにおいてもモール出店は有名な出店方法であり、効果的な出店方法と言えるでしょう。知名度の高い商品の場合は、集客や価格面での優位であり、モールとも相性が良いです。モールでの集客は容易で、モール内での差別化に注力できるという強みがありますが、モールの機能に依存するため、出店において、出店料やその他手数料が発生したり、モールの細かなルールに従わなければいけなかったりします。
自社サイトで始める
自社サイト運用とは、独自ドメインを取得し、その中にECショップを開設する運用方法です。独自ドメインでのサイト設計では、顧客接点を多く持ち、ユーザーを育てることで収益の最大化をしやすくなるという特徴を持ちます。自社ブランディングには優れた販売モデルですが、集客を自力で行う必要があり、広告や販促に費用が掛かります。しかし、価格競争に巻き込まれにくく長期的にメリットを感じられます。
商材や業界特性、ブランド力などで方向性が変わるので、市場調査をして、自社に合った方法で出店を考えましょう。
越境ECを始める際の注意点
越境ECに向かない商品
越境ECは海外との輸出入なので、商品によっては関税法によって制限されてしまいます。
日本からの輸出に規制がかかる商品
商品によっては関税法の規制に引っかかる場合があり、輸出入に注意しましょう。
販売国で輸出や輸入が禁止されている商品でないかを確認するには各国の税関ホームページを確認しましょう。
国際間輸送できない商品
国際間輸送をするとき、国際郵便「EMS」がよく使われますが、送れないものも存在するので注意しましょう。
例で言いますと、ジュエリーなどの貴金属や貨幣などの貴重品、食品やリチウム電池などは送ることができません。国際間輸送できるのはEMSだけではないので、家電など大型の商品を輸送する場合には、他の輸送サービスも併せて検討してはいかがでしょうか。
関税が高い商品
場合によっては、関税を支払う義務が消費者に発生することがあり、国外へ商品を送る場合には注意が必要です。商品購入者が支払う金額は、商品代金と消費税、送料だけではなく、関税額も加わるので注意しましょう。
送料や関税がかかることを考慮して販売額を決めないといけません。税関のホームページで確認して販売商品にどのくらいの関税がかかるかを調査しましょう。
国内よりも配送料・手数料が高くなる
国内への配送料と比べると、海外への配送は高額になります。
例としては、比較的速く国外へ商品を届けられ、追跡可能なヤマト運輸の国際便を利用した場合、10kgの荷物を関東からアメリカへ配送する料金は8,850円。同じ条件で荷物を関東から沖縄に送る場合は2,490円です。
国外への配送を取り扱う業者は他にもありますので、販売商品をどの方法で配送するのが良いのかをよく検討する必要があります。
販売先によって法律が異なることを知る
越境ECでは販売先によって法律が異なるので、販売する国に合わせて対応を柔軟に変えていく必要があります。想定外のトラブルが起きないように事前に調査をし、トラブル対策をしましょう。新規で販売する国ができた場合は、事前にどんな手続きが必要なのかを調べておくことが重要です。
為替市場によって売上が変わる
国内市場は日本円で取引するのと違い、越境ECは各国の通貨で取引されるため、為替相場によって売上が変動する場合があるので注意しましょう。
例えば、ドルで円安の場合は、売上のドルを円に換金する際、売上アップにつながりますが、逆に円高の場合は、受け取る金額が減少することになります。
越境ECに取り組むためのポイント
越境ECは国内ECとは違い、国内ECと同じような対応をしていては思うような成果が得られず、思わぬトラブルが発生したりする場合があります。
では、具体的にどのようなことに気をつけるべきか下記でご紹介します。
ターゲットのニーズを調査
国によってニーズはさまざまなので、同じ年齢、同じ年収、同じ家族構成、同じ趣味であったとしても異なります。
また、キャンペーンやブラックフライデーなどのセールが行われる時期も国によって違うので、販売する国の情報をいち早くキャッチするために、情報収集は忘れないようにしましょう。
越境ECサイトは多言語対応
越境ECサイトを構築する場合は、多言語対応にすることが必須と言えるでしょう。多言語対応するには、オペレーターなどに各言語に対応できる人員確保も一つの方法ですが、コストが高くなってしまうので注意しましょう。
また、多言語化できるサービス・ツールなどがあるのでいろいろ比較して、自社のサイトにあったものを選ぶようにしましょう。
安心して購入できる決済・配送方法
販売する国によって決済方法、配送方法が違います。また、手数料や配送料も国によっては高くなる場合があり、販売できたとしても収益に繋がらなくなってしまうことは避けましょう。
国によって配送手段も異なり、商品によっても違うので、自社の商品にあった業者を選びましょう。
関税や配送にかかる費⽤・⽇数を把握
国内向けの発送よりも海外への発送は配送日数が長くなるので、配送コストも高額になるのが一般的です。発送先の国によってもかかるコストや日数は違います。あらかじめ発送のリードタイムを把握し、消費者に対して適切な配送料金や到着予定日数を伝えられるようにしましょう。
また、海外発送は通関検査が必要となりますので、商品の種類、金額によっては関税が発生する場合もありますので注意しましょう。基本的に受取人が支払うことになる関税は、トラブルにならないよう事前に関税がかかる可能性について伝えておくことが良いでしょう。
物流トラブルに対応できる体制を整える
物流トラブルには気をつけましょう。国内発送でもトラブルが起きる可能性はありますが、海外発送は国内よりも長期間の配送になるため、よりリスクが高まります。
梱包を厳重にしたり、梱包材を多く入れたりするなどして、配送事故が起こりにくいようにするのと同時に、荷物の流れを常に把握できるようにしましょう。トラブルが起きても、速やかに対処ができる物流体制を構築するようにしましょう。
SNSを利用し商品をプロモーションする
海外でも繋がりがあるInstagramやTwitterなどSNSを利用することはとても有効です。世界中の人が集まるSNSで自社の商品を上手にプロモーションし、アピールすることができれば、認知度が上がり、売上増加にもつながるでしょう。
市場マーケティングをしっかり行えば、コストを抑えながらも、高い宣伝効果が得られる可能性のあるメディアとなります。
越境ECは戦略と分析が重要
世界市場は非常に膨大であり、自社商品を販売するためには、国内販売以上に精密で詳細な戦略と分析が必要になります。準備にしっかりと時間をかけ、自社の商品を海外のどのエリアで、どのようなターゲット層に売り込むのか、習慣や国民性など幅広い視点からターゲットを絞り込むことが重要でしょう。
越境ECで自社商品を海外に発信
「日本ブランド」は、世界中で通用する信頼と安心の象徴とも言え、伸び続ける世界のEC市場はとても魅力的です。
国と国の距離は縮まっており、国を跨いだビジネスも現在では容易になっています。販売価格だけではなく、商品の付加価値を売ることが越境ECでの販売成功のカギと言えるのではないでしょうか。
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